カード決済の受領日に関する内閣府の公式見解の変更について

概要

内閣府NPOホームページの寄付金受領基準に関するQ&Aに重要な更新がありました。
詳細は以下の内閣府NPOホームページQ&A3-2-16をご確認ください。
 
これまでNPO業界では、クレジットカードによる寄付の場合、寄付者が決済を行った「決済日」ではなく、決済代行会社から団体に入金される「入金日」を受領日とする慣習がありました。この慣習は内閣府NPOホームページのQ&A3-2-16の「寄附者名簿」に関する記載に起因していると考えられます。コングラントでは、この記載がNPOの業界全体に対して誤った解釈と運用を生んでいるとして、顧問弁護士と連携しながら内閣府に改善を求めて参りました。(弊社だけではなく、これまでに多くのNPO関係者から改善要望が出されていたのではないかと思います)
 
2023年12月22日に該当の記載が更新され、以下の変更がありました。
  • 寄付者がクレジットカードで支払い手続きをした日(決済日)を寄付金の受領日としてPST要件の審査に必要な寄付者名簿に記載できるようになった(一定の条件あり)
  • クレジットカードの決済日を寄付金受領証明書の受領日として扱えることが明記された
 
この変更は業界全体における決済日基準での領収書発行を促進する重要な一歩となります。
 

背景

これまでのNPO業界では、クレジットカードによる寄付の場合、寄付者が決済を行った「決済日」ではなく、決済代行会社から団体に入金される「入金日」を受領日とする慣習がありました。この慣行は、寄付者の認識との齟齬や、寄付者が前年の確定申告で税制控除を申告できないという問題を生じさせていました。
 
ECサイトでの商品購入やふるさと納税など、一般的にはクレジットカード決済の際の領収書には「決済日」が使われます。しかし、NPOへの寄付だけは「入金日」が広く使用されてきました。これには過去に内閣府NPOホームページ上で公開されていた以下の記載が影響しています。
 
なお、PSTの判定上、受入寄附金は、実際に入金したときに収益として計上することとしているため、寄附者名簿に記載する寄附金を受け入れる年月日は、クレジットカード会社から法人への入金があった日にするようにしてください。 (注)「1.寄附者が支払いの手続をした日」や「2.寄附者の銀行口座から引き落とされた日」とは異なりますのでご留意ください。
 
そもそもこの記載はPST判定に必要な寄付者名簿の日付を規定したものであり、寄附金受領証明書に関して言及したものではありませんまた、寄付金受領証明書に決済日を使用してはならないという法的根拠もありません。しかし、「寄付金受領証明書に関しても寄付者名簿と同様に入金日基準にすべきと認識されてきたこと」、「寄付者名簿が入金日基準であることで、寄付金受領証明書を決済日基準にしてしまうと寄付の受領日にずれが生じてしまい管理が煩雑化してしまうこと」から、NPO業界では入金日基準が一般化してしまったものと考えられます。
 
寄付金受領証明書の日付が入金日基準になることにより以下の弊害があります。
  1. 入金日基準は一般的ではないため、寄付者の認識との齟齬が生まれてしまうこと
  1. その年の確定申告で利用できないなど、寄付者に不利益が生まれてしまうこと
上記の理由に加えて、寄付金受領証明書の受領日が入金日にすべきという法的根拠がないことから、コングラントでは2023年5月のシステムリニューアルに合わせて、領収書発行機能の受領日を決済日にするという変更を行いました。
 
また、内閣府NPOホームページのQ&Aの記載がNPO業界全体に対して誤った解釈を生み、不利益を発生させていることに対して、コングラントから顧問弁護士を通じて内閣府に改善を求めてまいりました。
 
2023年12月22日に行われた更新では主に以下の変更があり、寄付者とNPO双方にとって明確でわかりやすい基準が設定されました。
  • 寄付者が支払い手続きを行った日(=決済日)をもって入金されたものとみなし、寄附者名簿に記載する寄附金を受け入れる年月日とすることが認められた(一定の条件あり)
  • 確定申告に必要な寄付金受領証明書の受領年月日を「決済日」にすることができると明記された
更新前
更新前
更新後
更新後
 
寄附金受領証明書に関しては正確には国税庁の管轄になりますが、今回、内閣府NPOホームページ上で更新されたQ&Aは、業界全体における決済日基準での領収書発行を促進する重要な一歩となります。この変更により、寄付者の方々はその年の確定申告で利用しやすくなるとともに、NPO側も寄付の管理をより効率的に行うことが可能になります。
 
「年内に寄付をしたのにその年の確定申告で使えなかった」という体験は、寄付者の満足度を下げる一因になります。また、「12月の寄付が年内の寄付として扱われないこと」により寄付者が寄付を諦めることにつながる可能性があります。
 
以上の理由から、コングラントでは「決済日」を受領日として扱い、寄付者が支払い手続きを行った日の寄附金受領証明書を当たり前に受け取れるよう、引き続き「決済日基準」を推奨して参ります。
 
皆様のご理解と今後のご協力をお願い申し上げます。